セールや在庫処分をしているのに、「思ったほど反応がない」「お客様の食いつきが弱い」と感じることはありませんか。
このとき、見落とされがちなのが「数字の見せ方」です。
同じ1,000円の商品を値引きするとして、「20%OFF」と書く場合と「200円引き」と書く場合、「1,000円 → 800円」と割引後価格まで書く場合では、値引き内容は同じでも、お客様が受け取る印象は少しずつ変わってきます。
同じ値引き内容でも、数字の出し方によって「お得そうに感じる度合い」や「安心感」は変わりやすくなります。
この記事では、すぐに見直しやすい「価格・割引POPの数字の見せ方」を、まず%表示と円引き表示の特徴を押さえ、そのうえで単価帯やシーン別の使い分け方を整理します。
さらに、在庫処分・特価コーナー・タイムセールでのハイブリッド運用の考え方と、現場で迷わないための簡単なルールをまとめていきます。
この記事の流れは次のとおりです。
※この記事で挙げる金額や割引率は、すべて考え方を説明するための「仮の例」です。
実際の価格設定や割引幅は、各店舗の原価・利益率・在庫状況などに応じて検討してください。
この記事の要点・結論
最初に、この記事で押さえたいポイントを簡単に整理しておきます。
%表示は、数字を大きく見せやすく、「セールをしています」という空気を遠くからでも伝えやすい表現です。
入口や通路沿い、エンド棚の上部など、「まず気付いてもらいたい場所」と相性が良い見せ方と言えます。
一方で、円引きや「通常価格 → 割引後価格」のような書き方は、「結局いくら払うことになるのか」を具体的にイメージしてもらうための表現です。
特に高単価商品やセット商品、他店と比較されやすい商品では、値引き額と最終価格が見えていたほうが安心感につながりやすくなります。
在庫処分や特価コーナーのように、ある程度まとまりのある売場では、「コーナー全体は%でざっくり」「個別の商品は円引き・割引後価格で丁寧に」というハイブリッド運用が扱いやすくなります。
タイムセールや短期イベントでは、「どれくらい安いか」という数字と、「いつまで安いか」という時間情報を組み合わせて、「今買う理由」をつくることが大切です。
そして最後に、毎回ゼロから悩まなくて済むように、自店なりの「%で出す商品」「円引きや割引後価格で出す商品」のざっくりしたルールを決めておくと、POPづくりも売場づくりもかなりラクになります。
同じ値引きでも「%」と「◯円引き」で印象が変わる理由

お客様は「数字の大きさ」と「いくらになるか」で判断している
お客様が値引きPOPを見たとき、頭の中でしていることは、複雑な計算ではありません。
まずぱっと目に入った数字が大きいかどうかで、「なんとなくお得そうか」を直感的に判断し、そのあとで、「レジでいくら払うことになるのか」をざっくりイメージしている程度です。
ここで効いてくるのが、「%の数字の大きさ」と「支払う金額のイメージのしやすさ」という二つの要素です。
数字が大きければ、それだけバーゲン感やお得感は出しやすくなりますが、最終的な金額がまったく見えないと、不安が先に立ってしまうこともあります。
逆に、金額がはっきり見えていれば安心はしやすくなりますが、数字そのものは小さいため、ぱっと見のインパクトは弱くなります。
数字の見せ方を考えるときは、「インパクトを優先したいのか」「安心感を優先したいのか」、この二つのバランスを意識しておくと、%と円引きの使い分けが整理しやすくなります。
%表示(◯%OFF)の特徴
%表示は、目立たせやすさという意味で強い表現です。
「20%OFF」「50%OFF」といった文字は、数字自体を大きく配置しやすく、少し離れた場所からでもセール中であることを伝えやすくなります。
店頭入口や通路沿いのエンド棚、フロア奥にある特価コーナーの呼び込みなど、「まずセールに気付いてもらうこと」が目的の場面と相性が良いです。
一方で、実際にいくら安くなるのかは、お客様が頭の中で計算しなければ分かりません。
単価が低めの商品であれば、「このくらいかな」と感覚的に受け止めてもらいやすいですが、金額が上がるほど「◯%って結局いくら?」と感じる方も増えていきます。
特に、ちょっと高めの買い物をするときには、「お得そうだけれど最終的な金額が見えない」という不安を残してしまうこともあります。
円引き・割引後価格の特徴
「200円引き」や「通常1,000円 → 今だけ800円」のような表現は、支払う金額を具体的にイメージしやすい見せ方です。
とくに高単価商品では、「いくら安くなるのか」「いくらまで下がるのか」がはっきりしていることで、安心してカゴに入れてもらいやすくなります。
近隣店舗やネット通販と比較されやすい商品では、「この店で買うとこの金額になる」という情報自体が、POPとしての価値を持ちやすくなります。
反対に、数字そのものは小さくなるので、%表示のようなインパクトは出しづらくなります。
「20%OFF」と「200円引き」を横に並べると、多くのお客様は前者の方に目がいきやすくなります。
また、情報量が増える分、文字をある程度小さくせざるを得ない場面も出てくるため、遠くからは読みにくくなり、近づいてから初めて内容が分かるケースも増えます。
%で見せたほうが相性の良いケース
単価が低め〜中価格帯の商品
1,000円前後の商品を値引きするとき、「20%OFF」と書かれていても、多くのお客様は「だいたいこれくらい安くなる」とざっくりイメージできます。
食品・日用品・雑貨など、単価が低め〜中価格帯の商品では、「◯%OFF」という見せ方でも、支払金額のイメージが極端に離れてしまうことは少なく、心理的な負担は小さく済むことが多いです。
売場としても、「20%OFF」「30%OFF」といった大きな数字のPOPを並べることで、通路から見たときの“セール中らしさ”を演出しやすくなります。
単価帯がある程度揃っている棚や、同じカテゴリの商品が並ぶ棚では、%表示でまとめてしまった方が視覚的にもすっきりします。
全品・広い範囲のセール
「店内全品◯%OFF」「この棚の商品◯%OFF」「ブランド◯◯まとめて◯%OFF」のように、対象範囲が広いセールでは、%表示のほうがまとまり感を出しやすくなります。
短い言葉で、「どこからどこまでが対象か」を伝えやすいのも利点です。
こうしたPOPは、店頭入口やエスカレーター前、通路沿いの目立つ場所に出すことが多くなります。
来店した瞬間や、通りがかったときに「今はこのお店でセールをやっている」と気付いてもらう役目が強いので、「細かい数字の正確さ」よりも、「ぱっと見てセールだと分かること」が重視されます。
ファーストタッチ用のPOPとして使う
売場を設計するとき、「最初にセールに気付いてもらうPOP」と「商品を手に取ったあとに、内容を詳しく説明するPOP」を分けて考えると、数字の役割も分けやすくなります。
たとえば、入口や通路側には「最大50%OFF」「本日20%OFF」といった大きな%表示のPOPを置き、お客様が売場に近づいてきたところで、値札や小さめのPOPで詳しい金額や条件をフォローするイメージです。
呼び込み役のPOPには%を使い、説明役のPOPでは円引きや割引後価格を使う、と役割を分けると、数字の使い方に一貫性が出やすくなります。
円引き・割引後価格で見せたほうが相性の良いケース

高単価商品・セット商品
20,000円の商品を10%OFFにする場面を考えてみます。
「10%OFF」とだけ書かれていると、ぱっと見でのインパクトはありますが、実際にいくら安くなるのかは、お客様が頭の中で計算しなければ分かりません。
「2,000円引き」や「通常20,000円 → 今だけ18,000円」と書いてあげると、「どのくらいお得なのか」「支払う金額がいくらになるのか」が一目で伝わるようになります。
家電や高価格帯コスメ、コートやスーツなどのアウター、いくつかの商品をまとめたセットなどは、この考え方と相性が良い例です。
もともとの金額が大きいからこそ、「いくら下がるのか」「いくらまで下がるのか」が見えていること自体が、お客様にとっての安心材料になります。
比較検討されやすいカテゴリ
近隣店舗やネット通販と比較されやすい商品では、「何%OFFか」よりも、「今この店で買うといくらか」が分かることのほうが重要になることがあります。
とくに定番商品や、価格差が気にされやすいカテゴリでは、「通常◯円」と「割引後◯円」を並べて見せるだけでも、選ばれやすさが変わってきます。
こうした商品では、「◯円引き」「通常◯円 → 今だけ◯円」という書き方で、差額と最終価格をセットで見せてあげると、お客様が他店やネットと比べるときの基準になりやすくなります。
レジ前の不安を減らしたいとき
%だけが大きく書かれていて、対象商品や最終価格が曖昧なままだと、「本当にこの商品も対象なのか」「レジで思ったより高くならないか」と不安に感じるお客様もいます。
とくにクレームにつながりやすいカテゴリや、高額な商品では、この不安が購入のブレーキになることがあります。
こういう場面では、「通常◯円 → 今だけ◯円」といった形で、商品単位で割引後価格をきちんと見せておくことが大切です。
値引き額と最終価格の両方が見えていれば、お客様は「この金額なら買ってもいい」と判断しやすくなりますし、レジでのギャップも減らせます。
在庫処分や特価コーナーでの数字の見せ方

コーナー全体は%、個別商品は具体価格で見せる
在庫処分やアウトレット、特価コーナーのように、「ここからここまでがお得です」とまとまりのある売場をつくるときは、%表示と円引きを組み合わせた見せ方が扱いやすくなります。
たとえば、ワゴンや棚1本を特価コーナーにする場合、通路から見える位置には「在庫処分 最大50%OFF」「この棚の商品 30%OFF〜」といった大きめのPOPを出して、まずはコーナー全体の“お得そうな雰囲気”を伝えます。
これは完全に呼び込み役のPOPです。
一方で、ワゴンの中や棚の中には、さまざまな価格帯の商品が混ざっていることが多いはずです。
そこで、商品近くのプライスカードや小さなPOPでは、「通常◯円 → 今だけ◯円」「◯円引き」といった形で、具体的な金額を書き添えていきます。
「ざっくりお得そう」という感覚と、「この商品はこの値段なら買ってもいいかもしれない」という具体的な判断を、段階的にサポートするイメージです。
高単価商品だけ円引き・割引後価格でフォローする
同じ特価コーナーの中でも、単価が高い商品や、特に売り切りたい在庫については、個別に少し丁寧なPOPをつけてあげると効果的です。
たとえば、ワゴン全体は「最大50%OFF」で打ち出しつつ、その中にある高額セット商品だけ「通常◯円 → 今だけ◯円」と書いたPOPを差し込んでおくパターンです。
あるいは、棚1本を「この棚の商品30%OFF」にしながら、上位ラインの化粧品だけ「今だけ◯円引き」とした個別POPをつける方法もあります。
「広い範囲を%でざっくり見せる」→「その中の高単価や主力商品だけは、個別に円引きや割引後価格で見せる」という考え方を持っておくと、在庫処分や特価コーナーでも数字のバランスが取りやすくなります。
訳あり理由と数字のバランス
在庫処分やアウトレットでは、「なぜ安くなっているのか」を一言添えておくことも大切です。
パッケージの傷み、シーズン終了、賞味期限が近い、型落ちなど、理由が分かれば、お客様は「安いのには理由がある」と理解したうえで選びやすくなります。
数字のPOP(%・円引き・割引後価格)に加えて、「訳あり」「在庫限り」「生産終了につき」などの一言POPを組み合わせると、数字の説得力も高まりやすくなります。
数字だけが強く出ている売場よりも、「理由」とセットで伝えられている売場のほうが、お客様にとっては安心しやすい状態です。
タイムセール・短期イベントの数字設計
%+時間帯・円引き+タイムリミットをセットで見せる
タイムセールや◯日間限定セールでは、「どれくらい安くなるのか」と同じくらい、「いつまでその条件で買えるのか」を伝えることが重要になります。
数字の見せ方としては、割引内容と時間情報をセットで伝えるイメージです。
たとえば、「本日◯時〜◯時まで 全品20%OFF」と書けば、その時間帯に合わせて来店する理由をつくりやすくなります。
「本日◯時まで この棚の商品 200円引き」という見せ方であれば、「今日のうちに決めてしまおうか」と背中を押すきっかけになります。
入口や通路側のPOPでは%表示を使ってインパクトを出しつつ、その中に時間帯や日付もきちんと入れておきます。
棚前やレジ付近のPOPでは、円引きや割引後価格で具体的な金額を示し、「今このタイミングで買うとここまで安くなる」というイメージを持ってもらう流れです。
来店する価値を感じてもらうための考え方
タイムセールで「わざわざその時間に来店する価値がある」と感じてもらうためには、普段のセールよりも少しだけ割引率を高くする、普段はあまり値引きをしない商品を対象に含める、といった工夫も効果的です。
このときも、数字だけが一人歩きしないように、「どの商品」「どの時間帯」「どのくらいの数量」が対象なのかをセットで設計することが大切です。
たとえば、「本日◯時〜◯時まで、◯◯ブランドのアウターが2,000円引き、各サイズ◯点限り」といった形で、数字と条件をまとめて見せてあげると、お客様は「この時間に行けばこの商品がこれだけ安く買える」と具体的にイメージしやすくなります。
現場で迷わないための簡易ルール

自店の「%/円引き」ルールを決める
数字の出し方は、考え始めると奥が深く、売場や商品によっても正解が変わります。
毎回ゼロから悩んでいると、POPづくりに時間がかかりすぎてしまうこともあります。
そこで、自店なりの「ざっくりルール」を一度決めておくと、現場での判断がかなりラクになります。
たとえば、「単価◯◯円未満の商品は基本的に%で表示する」「単価◯◯円以上の商品は、基本的に◯円引きか割引後価格で表示する」といったシンプルな線引きです。
実際の金額ラインは、客層や商品の価格帯に合わせて設定します。
「このラインを超えたら数字を変える」という目安が決まっているだけでも、POPをつくるときに迷いにくくなります。
カテゴリ別の数字ルール
価格帯だけでなく、カテゴリごとに数字の出し方の方針を決めておく方法もあります。
食品や日用品は、%表示を中心にして売場全体のセール感を重視する。
アパレルでは、Tシャツなどの低〜中価格帯は%で統一し、コートやスーツなどの高価格帯は「◯円引き+割引後価格」を基本にする。
家電や高単価雑貨では、値引き額と割引後価格をしっかり見せつつ、入口の呼び込みPOPだけ%を使う。
こうした「カテゴリ × 数字の出し方」の組み合わせを一度紙に書き出しておくと、スタッフ同士での共有もしやすくなります。
POPテンプレ・台紙を決めておく
%用のPOP台紙、円引き用のPOP台紙、割引後価格を大きく見せるためのPOPなど、よく使うパターンだけでもテンプレート化しておくと、日々のPOPづくりの負担を減らしやすくなります。
レイアウトは決まっていて、数字だけ差し替えれば使える状態にしておけば、売場での判断や作業スピードも上げやすくなります。
よくあるNG・もったいない数字の見せ方
ここからは、現場でよく見かける「少しもったいない数字の見せ方」を、代表的なパターンごとに見ていきます。
同じ棚の中で「20%OFF」「300円引き」「特価◯円」などがバラバラに並んでいて、理由もなく混在しているパターン
同じ棚の中に「20%OFF」「300円引き」「特価◯円」といった違う見せ方のPOPがバラバラに並んでいると、お客様から見ると比べにくく、「どれが本当にお得なのか」が分かりにくくなります。
数字の種類やレイアウトが揃っていない売場は、ぱっと見の印象もごちゃつきやすくなります。
この問題を避けるには、同じ棚や同じカテゴリの中では、基本的な見せ方をそろえておくことが大切です。
「この棚は%で統一する」「このカテゴリは円引きで統一する」といった方針を決めておくと、売場の印象もすっきりします。
どうしても混ざる場合は、「高額帯だけ円引きや割引後価格にして、それ以外は%にする」といったように、混在に理由を持たせておくと分かりやすくなります。
数字の出し方に意味づけをしておくことで、スタッフ同士でも運用ルールを共有しやすくなります。
割引後価格がどこにも出ていないパターン
%や◯円引きだけが大きく書かれていて、割引前の価格や割引後の価格がどこにも書かれていない売場も、意外と多く見かけます。
一見すると「かなりお得そう」に見えますが、お客様からすると「結局いくらになるのか」が分からず、不安を感じやすくなります。
とくに高単価商品では、最終的な支払金額が見えていないと、「レジで思ったより高かったらどうしよう」と感じて、カゴに入れるところまで進まないこともあります。
数字のインパクトだけを優先してしまうと、かえって購入の後押しにならないケースです。
高単価商品や慎重に選ばれやすいカテゴリでは、「通常◯円 → 今だけ◯円」といった形で、一度は割引後価格を見せておくことをおすすめします。
値引き額と最終価格の両方が分かるようにしておくと、お客様は安心して買いやすくなります。
条件が細かすぎて誰も読まないパターン
「会員様限定」「◯点以上で対象」「特定の決済方法のみ」「一部対象外商品あり」など、条件が多いセールでは、注意書きがどうしても増えがちです。
すべてを1枚のPOPに詰め込もうとすると、文字だらけになり、結果的に誰も最後まで読まない状態になりやすくなります。
お客様が一瞬で目にしているのは、まず「どれくらい安くなるのか」という数字の部分です。
この時点で内容を理解できないと、「何か細かい条件がありそうだ」「自分は対象外かもしれない」と感じて、売場から離れてしまうこともあります。
条件が多くなるときは、メインの数字はできるだけシンプルに見せて、細かい条件は別の小さな注意書きPOPに分ける方法が有効です。
大きなPOPでは「数字」と「ざっくりした対象範囲」だけを伝え、横に小さく「会員様限定」「一部対象外あり」などをまとめておくと、お客様も「どこまで読めばよいか」を判断しやすくなります。
まとめと今日からできる数字見直し
価格・割引POPの数字は、同じ値引き内容でも、「%で大きく見せるのか」「◯円引きや割引後価格で具体的に見せるのか」によって、お客様の受け取り方や安心感が変わりやすくなります。
単価帯やカテゴリ、売場の位置によって向き・不向きがあるので、自店なりのルールを一度決めておくことが、日々の運用をラクにする近道です。
今日からすぐにできる見直しとしては、次のようなステップが考えられます。
一度ルールとテンプレートを決めてしまえば、あとは売場やセール内容に合わせて微調整するだけで済みます。
数字の見せ方を整えることで、同じ割引でも「伝わり方」が変わり、セールの反応も少しずつ底上げしやすくなります。

